南アルプス　戸台川支流　舞姫の滝

南アルプス　戸台川支流　舞姫の滝

山行日：２００８年１月１９，２０日

メンバー：羽矢　洋、碓井桂子

　金曜夜遅く国立を発って下道２０号を走って氷を目指す。途中、道の駅「下蔦木宿」に着く頃には眠くなって、駅裏の川原で幕沈。

　翌土曜は入山だけだからゆっくりと起き出し、テント撤収。気温はマイナス６℃だし、寒風吹きっ晒しだから、素手に堪えた。実は、この撤収が今回の山行中一番辛いものであった。

　杖突峠を越えて高遠へ入り、そのまま戸台へ向かう。河原の駐車場には寂しいことに１台の車が居るだけ。登山者のものかどうかは不明。

　準備を整え出発だ。

　雪はうっすらと積もっている、というより被っている程度で、日向には雪はない。白岩の堰堤手前の林道上にはハンターの車が数台。なぜ、彼らが乗り入れることができるのか納得がいかない。行政はどういう計らいをしているのか？

　白岩堰堤を越え、その先の大堰堤を越え、河原に降り立ったところで一本立てる。実に荒涼とした風景だ。

"冷え込むという予報に反し、春のような陽気の中、赤河原を目指す。それにしても荒涼とした風景が続く・・"

　巨大堰堤を作ることで河川勾配は緩み、その途端に河川の流速は低下し、その結果、増水時の流れの幅は広がることとなる。これによって峪の両岸は著しく浸食作用を受け、斜面崩壊は助長され、峪はますます荒れるという図式そのものを、いくら無知とは言え旧建設省の愚か者たちは知らないはずはないはず。不毛な構築物を目にするたびに憤りを覚える。

　過去、角兵衛沢手前からは左岸側に安定した河岸段丘が発達し、ここに登山道が付けられていたはずだが、今は洪水によってひどく荒れ、ガレ歩きを強いられ、この状況は熊穴沢入り口を示す看板のあるあたり近くまで続く。

　すこしだけ気合が入っていたからか、意外に早く赤河原に到着。丹渓山荘を覗くが、だれもおらず、結局、峪は貸しきりのよう。

　戸台本谷側へ少し入ったところにフラットなスペースを見つけテントを設営。くつろぎタイムに突入だ。

　明けて日曜。

　今日は午後になってから天気は崩れるという予報だ。うっすら雲が掛かるが、青空も見える。気温も高めで、手足の痛みは感じずにすみそうだ。朝食をゆっくりと済ませて出かける。

"今日も冷え込みはそれほど厳しくはなさそうだ。さて、出かけましょうか。

　舞姫ルンゼ出合いまで１０分となっているがゆっくり歩いたからか２０分近くかかる。目の前にするF1は、ボリュームはないが結氷状態はまずまず。準備をして直ぐにスタート。

"テントを後にして、しばらくで舞姫ルンゼが見えるようになる。上部にF3が見える。結氷はまずまずかな？"

　F1、F2は問題なく、易しく越え、そこからは１００ｍ弱のガレ場歩きとなる。雪・氷でコンクリートされていればいいのだろうけどまったく雪のない状況だからとても不安定なガレ歩きを強いられる。

"さあ、登りましょう。朝一番、F1、F2は超快適。"

　Ｆ３は遠目、まずまずの結氷状態に見えたが目の前にすると左側の氷柱は水を滴らせるツララの集合体で、攀ることは恐ろしい。

"いよいよF3。見た目良さそうでも、左は水が滴り、結氷は甘そう・・怖いから右を攀ることにする。"

　一方、右はまずまずで、意欲をそそられるものがある。右上に一段上がってオーバーハングの下で確保に入る。

　真下に来て見上げると傾斜がますます立って見え、少しだけ弱気になるが、がんばらねばと・・奮起する。

　左へ少しだけトラバッて一本決め、テイクオフ。こちらの氷柱もツララの集合体だからスクリューのポイントに迷うがそれでも時々不安なく効かせられて、そのたびに碓井さんに、きっちり決まっていますからと、自分に言い聞かせるように声をかける。ガイドブックには大同心大滝程度の難しさがあると書かれているけど、実は、僕が攀った氷瀑の中では大同心大滝が一番難しいものとしてランキングされている。