大台ケ原　千石嵓　サマーコレクション

大台ケ原　千石嵓　サマーコレクション

山行日：２００４年１０月１６日

メンバー：碓井桂子、羽矢　洋　　

　久々の好天が期待できそうな秋の週末、当初、北アの壁を計画。金曜の午後、都心での仕事を早々に切り上げ帰宅し、夕刊を携え入った厠の中で最初に目にしたのは、雪の降り積もった西穂山荘前のお寒い写真。その刹那、紀伊半島大台ケ原行きが決まった。

　碓井さんのパジェロミニ号を中央高速、東名、東名阪、名阪国道と、ひたすら、ただただひたすら駆立て、大台ケ原ドライブウェイ入り口に到着したのは、夜明けもほど近い３時半過ぎ。

　東京を出発した頃、韋駄天ミニ号の車中では「翌朝真面目に早起きをし、サマコレ・サンダーボルトを早駆けですぜ！」「当然だわ！」という会話が確かあった・・はずだが、麓に辿り着き、倒れ込むようにテントに入った時には、「朝はゆっくりと起きて、サマコレの最終パーティーとして取り付けば、誰にもあおられることなく、秋晴れのクライミングをエンジョイできますぜ！大丈夫、日が暮れる前には終えることができるはず。それに、ヘッドランプはティカではなく、ブラックダイヤモンドのムーンライトプロをこの日のために持ってきているではないですか。万が一夜になったって、こいつで照らせば、リードだろうとフォローだろうと怖かーないですぜ・・ムニャムニャ・・」となってしまっていた。

　ルーデンスアルパインクラブの菅さんから頂いた情報によると、駐車場は直ぐに一杯になるため、早めに上がって行くことがキーポイントらしい。朝弱の我々が、9時前に駐車場に到着した頃は、予想通りほぼ満車状態ながら、なんとかスペースをゲット。

　さあ、いよいよ出発だ。

"いよいよ出発だ"

　アプローチでは一度、大きく誤る。ロックアンドスノー２１号に記載されたアプローチの解説通り、古い看板を見つけ出し、そこから一般登山道を外れ、旧道とおぼしきトレースをたどる。記述通り広い千石尾根の左寄りを進んで行く。どこまで行ってもシオカラ谷への下降点を示す赤テープは現れず、小さなコブ、天辺に木の生えたボルダ―なども見当たらず。あらためて、別の記録を読み直すと、どうも様子が違う。

　かなり下ってきているが、時間的なロスはそれほどではない。それにこっちにはムーンライトプロがある。

　取り敢えず、登山道まで引き返し、気持ちを新たに一般道を下って行くと石畳の階段を降りきったところに新しい看板があった。ここから、なんとなくトレースらしいものが認められ、半信半疑ながらこれへ入って行く。直ぐに水の流れる小沢を横切り、この頃から明瞭なトラバース道と認識できるものになって、暫く進むと赤テープが垂れ下がり、下降点と思われるポイントに到着。目を凝らせば下方のガレ沢にも赤テープがあり、ここがシオカラ谷への下降点であることがわかる。

"比較的新しい看板から登山道を離れてトラバースに移行。程なく道も明瞭になる。"

　とても歩き辛いガレガレの沢を下降していくと、クライマーのコールが聞こえてきて、ここで初めて人心地つくことができた。サンダーボルトの取りつきへ上手くトラバースし、さらに先のサマコレの取りつきへ辿り着いたのは駐車場を出て1時間半後だった。サマーコレクションを先行するパーティーが見える。彼等は３ピッチ目をスタートしたところだ。

　ゆっくりと準備をし、ようやくスタートだ。二人分の荷物は一つのザックにまとめ、フォローが背負う作戦。しかし、二人分の雨具、水、食料、フリースのベスト、ツエルト、ヘッドランプ等々合わせると、結構な重量になった。

１ピッチ目

　チムニーっぽいガリーを羽矢からスタート。ノープロテクションでプレートのあるビレーポイントへ。

２ピッチ目

　いよいよ、本格的なルートの始まり。ボルトの間隔は短めで、嬉しい。フォローの羽矢はザックの重さに負けてヌンチャクを掴む場面も。リードでA0は駄目だけど、フォローはなんでもありですから・・と言い訳をしながらビレーポイントへ到着。

"２ピッチ目をリードする碓井さん。左から右、右から直上にラインがとられている。"

３ピッチ目

　トポによるとリーチがない場合１０ｃｄ、あれば９とある。背丈は低いがリーチのある羽矢は、案外やさしくリード。ここで先行する大阪からの男女パーティに追いつく。山岳会に所属しているわけではなく、クライミングジムの仲間とのこと。本ちゃんクライミングはほとんど行っていないということであったが、基本はきっちりとできており、見ていて安心なお二人だった。ここからは、急ぐわけでもなく、また、ルートファインディングも不要となったことで、僕も碓井さんもチョーお気楽モードに。

"３ピッチ目スタート直後の羽矢。ガッ、ガニマタ・・"

４ピッチ目

　このピッチがルートの核心だ。ここを行きたい気持ちが僕の顔に出ていたのか、碓井さんがリードを譲ってくれた。トポ通り、薄被りのところで２、３ポイント、そのグレードのムーブが出てきて、楽しい。

５ピッチ目

　中央バンドまでフェースクライミング。ザックが重い。フォローの羽矢は、終了点からさらに一段上の座り心地のよさそうなところまで上がって行き、碓井さんにも上がってきてもらう。

６ピッチ目

　中央バンドを左へ怖いトラバースからガリーっぽい部分を上がって行く。こわごわとトラバースして行く碓井さんを見ていて、どうしてそんなに怖いのか不思議だったが、行ってみて初めてわかる。足元が定まらない上、すっぱりと切れ落ちているため、フォローにとっても怖い所だ。ビレーポイントは狭く、先行パーティーより一段上の杉の木のテラスへ上がりこんでオフビレー。

"６ピッチ目の終了点に向かう碓井さん（赤い色は先行者）。"

７ピッチ目

　このピッチが、サマコレの白眉だ。ここで先行パーティーが先を譲って下さった。ありがとうございました。右のカンテラインを上がっていき、ハングの下を左へ。手の切れそうなガバのトラバースで、露出感もサイコー！！素晴らしい！！

"７ピッチ目。このルートの白眉ともいえるピッチだ。ホールドは手が切れそうなガバ。最高の露出感。快感だ！"

８ピッチ目

　カンテラインを上がって行くが、見た目以上に難しく感じられるピッチ。左よりに攀った羽矢はプロテクションの回収が難しい状況になって、ここでもＡ０に。

９ピッチ目

　ラストピッチだ。カンテラインより右の傾斜の強い部分にルートが引かれ、これはこれで楽しい。稜線までロープを延ばしてオフビレー。

　二人揃ったところで水分補給と行動食を頂く。明るい内に終われて良かったですね。どこかの温泉に行きましょう。

"ルートの終了点にてくつろぐ"

＜行程＞

　駐車場出発（8:50）―　取り付き到着（10:20）―　登攀開始（10:35）―　終了（14:55）　―　終了点出発（15:15）―　駐車場戻り（15:45）

＜アプローチメモ＞

　ロックアンドスノー21号のサンダーボルト開拓記録に書かれているアプローチの概要説明では辿り着けないかも。最もいいのは、コージ＆シブさんのＨＰ（http://www.geocities.jp/shinzan_yuukoku/index.html）のアプローチに関する記述（駐車場からシオカラ橋方面へ遊歩道を歩いていく。階段を降り切った所に看板があり、その裏手から水平道が伸びているので、それに従って行く。途中、小沢を横切った後、しばらく歩くと赤テープの付けられた所があり、そこからガレ場を下っていく。シオカラ谷の水面が見えた辺りからリングボルトの打たれた岩小舎の前を通り千石嵓基部を目指す。）と、きのぽんのアプローチ図（http://www.ne.jp/asahi/climbing/befree/diary/2000/7-12/sengokugura/topo.html）を照合するのが最適と感じた。なお、階段を降り切った所にある看板（ここまで、駐車場から１５分くらい。きのぽんのトポでは衝立と書かれている）ものは４枚の横木板が掛かる看板で、キャンプ禁止とかその他ごちゃごちゃ注意事項が掛かれた環境庁によるもので、まだ、新しく最初に現れるまともな看板と思ってよい。ここに来るまでにも石畳階段右手に古い立て札や看板を目にするが、いずれも書かれている文字は判読し辛いまでに朽ち掛けたもである。なお、きのぽんのアプローチ図では駐車場を出発して、直ぐに山の家を左手に見て石畳階段を下るようなイメージで記載されているが、正確には５０ｍ先にある山の家に続く道を逸れ、右下に下りるように付けられた石畳階段を下って行くことになる（きのぽん、すまん。我々は、ここで、えええっ？って一瞬迷いが生じたから。）。環境庁の看板から登山道を離れ、水平にトラバースして行くが、はじめは明瞭ではない。沢水の流れる小沢を過ぎる頃からトラバース道はしっかりと明瞭になる。

＜帰路メモ＞

　ルートを抜けてからは千石尾根は広い。気持ち的には尾根の右寄りの最も高い部分を登って行くのが良いと感じた。我々はアプローチの段階で誤って、この尾根をほとんど終了点付近にまで下りていたことから、ルートを終えてからの帰路は不安がなかったが、日が暮れてからの帰路では、方角の見極めに案外苦労するかも。